情報子概論 Ⅳ-3. 類似環境圧力と類似進化

LINEで送る
Share on Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加

情報子概論 Ⅳ-2. キャラクター(模倣子生物)の進化その2へ戻る

Ⅳ. 情報子進化の具体的事例
3. 類似環境圧力と類似進化

魚類とイルカは外見的によく似ている。もちろんエラ呼吸と肺呼吸などの大きな違いがたくさんあるが、イルカの外見は魚類に類似していると言っても問題はないだろう。イルカやクジラは哺乳類だ。

古生物学では、イルカやクジラは一度陸に上がった哺乳類の一部が再び水棲生活に戻る進化をした種と考えられている。なぜ哺乳類であるイルカが魚類のような形状へと進化したのか。これにも環境圧力が起因している。魚類もイルカも同じ海で生活している。魚類の生存している環境とイルカの生存している環境は類似している。生活環境が類似しているということはその2種を取り巻く環境圧力も類似しているということだ。進化は環境圧力によって生起される。故に、類似環境圧力下においては、例え異種であっても類似進化を遂げる。

「同調現象」と呼ばれている現象がある。これは遠く離れたところに暮らしていて全く面識がない複数の人間たちが、同時期に同じような発明をしたり論文を書いたりするという奇妙な現象のことである。これを超常現象などという非科学的説明で済ませる必要はなく、単純に情報体への類似淘汰圧力によるものだと説明できる。

地理的には遠くかけ離れていても、類似した環境で生活している人間は数多くいる。例えば「4人家族の長男で父親はサラリーマン、経済状況はまずまずで都市部に住んでいる人間」という環境で暮らしている人間は世界中に大勢いるだろう。人間のアイデアや行動様式も情報子であるから、当然、淘汰圧力に常にさらされている。魚類とイルカの外見的形質が似るように、アイデアや行動様式もまた似てくるのだ。

世界中の神話や民話に類似点がいくつもあるのも、無数にあった各地の集落の中には類似した生活環境がいくつもあったからだろう。恐ろしい猛獣の存在、洪水、干ばつ、噴火、地震などの災害、そして集落の大きな願いは子宝と豊穣だったはずだ。

近代資本主義の発展は大量生産/大量消費という状況を生んだ。特に都市生活者を取り巻く環境は、完全に同一とは言わないまでも、よく似てしまっている。このような画一化された環境においては、環境圧力は画一化されており、情報子進化も画一的になっている。同じような服を選び、同じような音楽を好み、同じようなことを話し、同じようなことを考える。今日一日の会話を思い出して欲しい。あなたの友人の話した内容はどこかで一度聞いたことがあるような話ではなかったか。そしてあなたの持っている意見も誰かの意見の受け売りではないのかと。

画一化された人間だけの集団には進化がほとんど生起しない。進化の生起には個体差が必要不可欠だ。このように内部的な多様性を失って固定化してしまった集団にあるのは「緩やかな絶滅」だけだ。

自己複雑化システム
「画一化は集団内のエントロピー値を増大させ、多様化は集団内のエントロピー値を減少させる」

近年、個性を尊重するような考え方が日本国内にも繁殖しつつあるが、個性を形成するのは親から受け継いだ遺伝子と自己を取り巻く環境や伝達されてきた模倣子である。自分自身の意志で個性を決定することはできない。

suika

四角い箱に入れて育てたスイカは四角くなる。これは遺伝形質としては次世代に継承されないが、四角いことが輸送に便利であり、またその形状が面白いという理由でよく売れるのであれば、スイカは全て四角い箱に入れて育てられるようになるだろう。そして、四角い箱に入れる手間を省くために、箱に入れなくても四角く育つスイカが品種改良によって生み出され、丸いスイカを駆逐していくだろう。型にはめることが自己保存にとって有利となるか不利となるかは分からない。全ては環境圧力によって決定されることであり、そこに意志や意味は介在しない。

ただ、四角いスイカが消費者に飽きられたときに丸いスイカや星型スイカがあれば、スイカ全体としては生き残れるかもしれない。複数の形質パターンを集団内の情報子プールに保存しておいた方が、より高確率で破局を回避できるのは明白な事実である。(※但し、集団内に多様性を保持するためのコストが集団全体の生存率を低下させる場合もあるので注意が必要。環境は絶えず変化するので正解は無く、圧力淘汰と進化適応が繰り返される)

 →情報子概論 Ⅳ-4. 擬態-偽ブランド品と海賊版ソフト-へつづく

情報子概論 Ⅳ-3. 類似環境圧力と類似進化” への1件のコメント