情報子概論 Ⅳ-4. 擬態-偽ブランド品と海賊版ソフト-

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情報子概論 Ⅳ-3. 類似環境圧力と類似進化へ戻る

Ⅳ. 情報子進化の具体的事例
4. 擬態-偽ブランド品と海賊版ソフト-

現在、世界中に「贋作」が大量繁殖している。骨董商の世界では、いかに贋作を見抜く鑑定眼を持っているかどうか(あるいはいかに贋作を真作に見せて愚かな客に高く売りつけるか)が、業者間生存競争の中でひとつの淘汰圧力になっている。

贋作や不正コピー商品というのは、自然界における「擬態戦略」に類似している。自らの形質が他の物似ているということで大きな利益を得ている。自然界での例として、ニセサンゴヘビやオオスカシバなどが擬態を獲得している。ニセサンゴヘビは猛毒のサンゴヘビに類似した警戒色をしていることで外敵から身を守っている。オオスカシバもハチに姿を似せることで鳥などの外敵から身を守る。

偽ブランド品や無許可キャラグッズなどの不正コピー商品の擬態は「防御擬態」ではなく「繁殖擬態」である。他者の形質を真似ることで、自らの繁殖を有利にしている。

コピー商品が大いに繁殖している例としては、偽ブランド品が挙げられる。「ブランド」はとても強い情報子を持っている。ブランド品はデザイン/耐用年数などを見ても商品としてとても優れている。だが成功しているブランドが成功している所以はそこではなく、毎年数十億円もの広告費を投じて、消費者の脳内に「ブランド=素晴らしい商品」「ブランド=持てばステータスUP」という情報子を散撒いていることにある。

消費者はイメージを刷り込まれ続けることで、シャネル、ルイヴィトン、グッチ、プラダ、ヴァレンチノのロゴマークが入っているだけで、そのバッグや洋服に価値があると思い込まされ、自分の保有している資源を大量に投じて購入してしまうようになる。

そこに目を付けたのが偽ブランド品だ。材質も縫製も粗雑なバッグであっても、グッチの形質をコピーしてロゴマークを入れるだけでそのバッグは売れるのだ。しかも、偽ブランド品の方は粗雑であるが故に製造費も安く済み、しかも広告費も0円だから本物よりコスト安で増殖することができる。人間は本能的に自らの持っている資源消費を出来る限り抑えようとする。類似した商品の場合、生き残れるのはより安価な方である。それ故に偽ブランド品は本来本物が持っていたニッチを浸食して繁殖するようになった。

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(財務省:知的財産侵害物品の輸入差止実績)

パソコン用ソフトや音楽CDの海賊版の場合は少し状況が異なる。偽ブランド品の場合、情報子は型紙など設計図にあり、それを基に作られたバッグや洋服といった現物が商品である。しかしプログラムやコンテンツは情報子そのものが商品として成立してしまう。そして現物を伴わない情報子は複製が容易である。Adobe社のPhotoshopや人気ロックバンドのメタリカのCDはとても人気が高い。そして海賊版と正規品の違いは、聴くだけならゼロに等しい。それ故に偽ブランド品以上にこれら海賊版は駆逐が困難である。おそらく正規品は自らの中に不正コピー防止の措置を組み込むことで、海賊版の繁殖を抑えようという戦略に出るだろう。(※追記:このレポートを書いた何年後かにコピーコントロールCDやレーベルゲートCDが販売されるようになった。現在はダウンロード配信に移行している)

情報子の観点からこの状況を見ると、情報子からすれば海賊版だろうが正規品だろうが繁殖手段のひとつに過ぎず、結果としてはAdobe社のPhotoshopやメタリカのアルバムは海賊版も含めて繁殖に大成功していると考える事ができる。

しかし、海賊版の大量繁殖はオリジナルを絶滅させてしまうリスクもある。オリジナルの絶滅(正規メーカーの倒産)は、結果として海賊版の絶滅を招くかもしれない。現に、偽ブランド品はオリジナル正規メーカーの利益を損なっている。そうなってくるとオリジナルである正規メーカーが膨大な広告費でブランドイメージを維持することができなくなり、つまりは偽ブランド品も求心力を失って売れなくなる。そこが偽ブランド品の繁殖限界と言えるだろう。コピーが過度に繁殖し過ぎるとオリジナルが破局して、最終的にコピーも破局してしまう。

(※追記:音楽コンテンツに関して、海賊CDや違法ダウンロードの場合は、ミュージシャンの収入源が興行収入や物販など複数あり、場合によっては正規CD売上減よりも海賊CD普及に伴う興行収入増が上回るケースもあるので、コピーによるオリジナルへの影響判断は偽ブランド品よりも複雑になっている。コピーの繁殖によってオリジナルがさらなる繁殖機会を獲得する場合もある。)

 参考資料:財務省:平成24年1月から6月までの税関における知的財産侵害物品の差止状況(速報)

 →情報子概論 Ⅳ-5. 軍拡競争-相互圧力の増大と資源限界-へつづく

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